アコギの弦って太いですよね。
昔は太いほどいい音がなるとか、「男なら太い弦」など意味のわからない精神論が多かったと思います。
しかし、太い弦はギターに優しくないのは1つの真実です。
ネックは反ってくるしトップ面は膨らんできたりと悪いことだらけです。
弦も固くなるのでプレイヤーの負担も大きくなります。
この前調べものをしている時に偶然読んだ記事で「ギターの音を大きくするために使用される弦が太くなっていった。」ということが書かれていました。
それに合わせてトップ面のブレーシングの改良がなされていったとのこと。
ということはギターの弦は最初の頃、もっと細かったのではないか?という疑問が出てきました。
ではもともとアコギの弦はどれくらいの太さだったのか?
マーティンの歴史を振り返りながらいろいろ調べてみました!
弦に関する記述
いろいろ調べてみましたが、弦の具体的な太さについて書かれているものは見つかりませんでした。
そこでギターが改良されていった歴史から推測してみようと思います。
マーティンギターの歴史
アコギと言えば1833年創業の歴史あるマーティンを調べればすべてがわかるといっても過言ではないでしょう。
ということで、マーティンの歴史を調べてきました。
マーティンのギターはその時代の音楽に合わせていろいろな改良を加えられてきました。そこで注目するべき3つのことがあります。
1916年 ドレッドノートの開発
今でこそ当たり前に存在するドレッドノート。当時の他のギターに比べるとかなり大きいのが特徴です。
なぜ大きくなったのか?その理由は音を大きくして、低音を豊かに出すためと言われています。
1916年には開発されていましたが、マーティンとして発売されたのは1931年です。
ギターは他の楽器と比べると音が小さいのが難点です。
そこで音を大きくするためにいろいろな工夫がなされてきました。
ボディを大きくする以外だと、リゾネーターギターの開発や、ピックアップが開発があります。
1939年 ブレーシングの位置をブリッジよりにして強度を上げた
1939年にトップを強化するためにブレーシング(ギターのトップの裏に張り付けてある力木)をブリッジに近づけました。
ブリッジに近いブレーシングの方が今は主流のため、1939年以前のブレーシングをマーティンではフォロワードシフテッド・Xブレーシングといいます。
1944年 ブレーシングのスキャロップ加工をやめた
トップ面は木の質量が大きいと鳴りにくくなってきます。そこでブレーシングを削って程よい強度を保ちつつ鳴りをよくするスキャロップ加工を採用していました。
しかし、1944年にブレーシングのスキャロップ加工をやめます。これもトップの強度を上げるためです。
音を大きくするために弦が太くなっていったことが原因
先ほどの3つは音を大きくするために行われてきました。
少し詳しく言えば、2つ目と3つ目は弦が太くなってきたことに対応するためです。
当時はマイクの技術なども進歩してなくギター本体の音を大きくしなければいけませんでした。
そのためギターを大きくしたり弦を太くすることによって音量を稼いでいました。
しかし、ギターを大きくすることはいいとして、想定よりも太い弦を張られるとギターが持ちません。
そのためギターの構造を変化させて強度を上げていきました。
しかし、強度が上がるとギター本体の鳴りが悪くなってしまいます。
そのため、現在のマーティンで高いランクのギターは1944年以前のギターの構造を復刻させたりしています。
その時の弦の太さは何インチ?
そこで疑問があります。
太い弦とは何インチの弦なのか?
戦前のギター弦のインチ数は本などを読んでも書いていなくて、謎です。
ブレーシングの強化がされていった時の記述にヘビーゲージが張られていたということが書かれています。
今の基準だと1弦が14のかなり太い弦ですが、当時はまだ弦の太さの基準などもあいまいだったのではないかと思います。
ヘビーゲージ=「今までより太い弦」が張られていたという意味にも取れます。
その後、戦後もブレーシングの位置は変更されたままでノンスキャロップが続いたということは、現在使われている弦が戦前でいうところのヘビーゲージではないかと仮説を立てました。
スティール弦はいつから?
マーティンの歴史を調べていくと、主要なモデルがスティール弦に変わるのが1928年だそうです。
それ以前のギターが本に載っていますが、スティール弦が張ってあるものもいくつかありました。
おそらくナイロン弦用とスティール弦用の両方を生産してたのではないかと推測してます。
ナイロン弦の場合は弦の張力が弱いので、トップの強度はそこまで必要ではありません。
しかし、スティール弦に変わって、さらに弦も太くなってきてトップの強度を増さなければいけなくなってきました。
スケールも短かった
ドレッドノートは他の機種に比べてスケールも長いです。今でいうところのロングスケール。
それ以外の機種は基本的に今でいうミディアムスケールでした。
今のギターの多くはロングスケールです。
もちろんミディアムスケールのギターも多く存在します。
何が言いたいかというと昔のギターは同じ弦であっても弦のテンション感が弱いということです。
つまり今のギターより弾きやすかったということです。
1976年 スキャロップ加工が復活
1944年以降、1976年にスキャロップ加工なされたHD‐28が発売されます。
このHD-28が発売された時の注意書きに「ミディアムゲージ以上は張らないように」ということが書かれていました。
この時代になってくると今の基準と変わらないのでミディアムゲージは1弦が13のセットのことでしょう。
昔はどれくらいの太さだったのか?
そもそもナイロン弦やガット弦を張るように作られていたものなので、トップの強度は太いスティール弦の張力に耐えられるものではないとも言えます。
ナイロン弦を弾いていたギタリストが初めて12や13のスティール弦を弾いたら指が痛くてたまらないでしょう。
そのため最初はもっと細い弦だったのではないでしょうか?
同じスティール弦のバンジョーやマンドリンの一番細い弦は10の弦を使っているようです。
単純に考えればアコギの弦はこれらの楽器の弦を使用してスティール弦を張ったと思われます。
そのまま転用すると1弦は10でしょう。
アコギにスティール弦が張られた最初のころは10だったのではないかと推測してます。
ピックアップの技術が発達した現在、アコギの弦は細くしても特に問題ない
そこで時代は変わって現在はピックアップの技術が発達して、ピックアップを通しても生音に近い音が出せるようになってきました。
そして、ほぼすべてのライブでは楽器ごとにマイクが使われています。ギターの生音もピックアップを使わなくても大きくすることができます。
そういった現状を踏まえるとアコギの弦は細くしていった方がいいんじゃないかという結論に至りました。
細い弦の方がギターの負担が少なくなる
細い弦を張った方がギターにかかる負担が減ります。
ギターの負担が少なくなれば、ギターのトラブルも減ってくることが考えられます。
ネックの反りやトップ面の膨らみなどが少なくなってくるはずなので、単純に考えるとギターの寿命が長くなります。
リペアに出す機会も減るということが考えられる。
ギターに関してはいい事だらけではないでしょうか?
肝心の音はどうなのか?
でも一番気になるのは音です。
音が細くなるという意見があると思います。
そこで実際に細い弦を張って弾いてみました。
まとめ
・昔のギターは弦が細かったと思われる。
・おそらく1弦が10のセットが使われていた。
注 筆者の推測です。もし正確なことがわかる方が居たらコメントをお願いします。
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